御教え『西洋医学の大誤謬(一)種痘による、免疫の不完全』

「明日の医術」  昭和11年5月15日

現在、凡ゆる疾患の原因を探究する時、それの殆んどが、一種の水膿の溜結である。されば之が頸部の周囲及び延髄、又は肩凹部に溜結すれば、風邪、神経衰弱、脳疾患、眼病、耳鼻咽喉病等の原因となり、胸部のそれは、呼吸器病を起し、其他胃腸、肝、腎、胆、中風、神経痛、リョウマチ等、実に、凡ゆる疾患の原因となるのであって、医学は、此膿毒を、先天性黴毒と診断するのであるが、之は全く誤である。吾人の識る所によれば、此れは実に、意外な原因から来てゐるのである。

それは、人間は生来、人により多少の差別はあるが、先天的に或種の毒素を保有して、出生するのである。それが即ち、麻疹、百日咳、疫痢、天然痘等である。然るに、麻疹や百日咳の毒素は、種痘の如き確定免疫法は無い為に、病気発生に依って、各々其毒素を自然排泄さるゝのであるが、独り天然痘のみは、種痘によって、毒素の排泄を確実に、停止せらるゝのである。即ち、停止さるゝのであって、排除されたのでない事を、充分認識しなければならない。此事は未だ医学上、発見されてゐない事である。

今日迄の医学は、種痘によって、天然痘が発生しないから、之によって免疫され得たと安心してゐるのであるが、ここに大誤謬が伏在する。

此天然痘毒素は、種痘によって、解消したのではなく実は、種痘に由って、病気の発生を停止されたまでゝある。病気発生の停止は、毒素の消滅ではない。単に、排除作用の停止であるから、排除作用を停止せられたる天然痘毒素の行方は、如何なる方面に、如何なる状態を以て残存し、又、之が如何に活動し、影響しつゝあるかといふ事である。医学は之を知らず、又、知らふともしないのである。

種痘に因って、発病を停止せられたといふ事は、実は、発病の力を失った事であって、発病の力を失ったといふ事は、毒素排除の勢ひが、挫折したといふ事で、軟性毒素に変化したのである。謂はば、陽性から陰性化したのである。そうして、潜行的に、体内各方面に流動し、適々弱体部を選んでは、溜結するのである。此膿結が、凡ゆる病原なのであって、進んで結核となり、尚進んで、癌腫ともなるのである。今日、医学が進んだと言ひながら、病患者が益々増加し、又、児童弱体者の驚くべき増加、国民の体格の低下等、学理に由っても解せられざる、不可思議な現象は全く、此陰性化した、天然痘毒素の跳躍が主な原因である事である。

故に種痘に依って、天然痘発生を防止した事は、実に第一工作であって、其恐るべき陰性化した毒素を全く解滅する。第二工作がなければ、意義を成さないのである。随而、此第二工作が発見された暁、種痘なるものは初めて、人類救済の恩恵者としての価値が有る訳である。故に、実は世人は、唯一つの天然痘を防止したによって、百の病患を与えられた結果になるのであって、寔に恐るべき事なのである。

然るに、喜ぶべし、我岡田式治療は、此第二工作たる、陰性化毒素の解消を、完全に遂行せられ得るのである。故に、之によって初めて、種痘の真価は発揮されるのであるから、理想的健康たり得るのである。

種痘実施以来、泰西に於ては、肺結核の激増を来したそうである。我国にあっても、近来肺結核と近眼の激増は、主に之が原因である。特に、小学生に多いのは、入学するや、頭脳の使用によって、天然痘の陰化膿が、延髄附近に溜結の結果、血液の脳への送流を妨げられ視神経が営養不足を来し、視力薄弱となるからである。