「熱鉄落下も御守護」

御蔭話 神奈川県H.G. (昭和二人年二月一五日)

今思い出しても戦慄する様な、肌に粟を生じる恐ろしさでございます。

明主様より、これ以上の御守護はないとまでの御守護を戴きまして、罪穢多き私如きに御怒りもなく、入信依頼数々の御守護を賜わります事は、何と恐れ多い事でございましょう。厚く厚く御礼申し上げますと共に御報告をさせて戴きます。顧みますれば一月七日午前六時五分の出来事でございます。私達の工場は圧延と申しまして、九〇キロの鋼材を加熱炉に入れ引出します時は一一〇〇度位あります。それを線材に圧延致します。機械は五○○馬力と八○○馬力のロールで、一方は七〇〇回一方は二五〇回の速さで熱鉄を噛み込みはき出すのであります。一秒に約六、七米延び、それを鉄箸にてつかみ次のロールに噛み込ませる仕事でございます。私は片側の班長を務めており、欠勤のない時は、只機械の調子を見たり、班員に注意をする程度でございますが、その日は正月の七草にて、欠勤者が多き為、私も鉄箸を取り熱鉄操作に当り、作業中不馴でその上素人である二、三人を相手に作業致しています途中、一寸の不注意から、延び行く熱鉄が、順調に延ばすべく置いてあるアングルにからんだ為、アアと思う瞬間目にも止らぬ速さで、熱鉄のからまったアングルは、大音響と共に鉄砂塵を上げて私の立っていた右足を払い転換して頭上に落下して参りました。足を払われた私は後に倒れ乍ら、一瞬私の脳裡にひらめいたのは、明主様の御尊顔でございました。すると何処からともなく右に伏せと言う、声ともつかぬ思いが頭の隅から発せられ、間髪をいれず命ぜられた侭に打伏せ、頭上の熱鉄は不気味な音を立てて引掛けたものを巻込みつつ機械に当り、飛び散るのがはっきり目に映りました。何しろ一〇〇度の鉄材が頭上一尺に近い所を一秒七米の速さで、三一〇米の長さが通り去る間は、生心地なく只右手で胸の御守様をしっかりと押え、運命は神様におまかせ致すより外にどうする事も出来ませんでした。熱鉄が延び行く様、噛み入る様、鉄の行動が通り過ぎる間を、生死の岐路にあり乍ら、はっきりと不断と変る事なく見分けられました。安堵の気持も束の間で、猛け狂った熱鉄の最後が、頭に触りましたのを感じ、右手にて払いのけましたが、熱鉄は頭から首へ落ちて来て、じりじりと髪は焼け脇の下を通り床に落ちました。大嵐の後の様に、荒れた広場に足を引きずり乍ら出ると、部下は顔色を変えて走り寄り、泣いて無事を喜んでくれました。ですが私の気持は平常と変る事なく、とり騒ぐ皆の行動が可笑しい位でした。その内の一人が何処か怪我をされてはいないかと、ズボンを巻き上げて見ました処、どうでしょう。全然気が付かなかったのに、豈は計らんや、膝下に鉤の手に一五〇ミリに及ぶ切傷でした。骨まで見ゆる程の重傷でした。ぱっくり開いた傷はものすごく、見ている者の中で貧血を起す人さえありました。肩や背の衣服の火を消してくれる者や、頭髪を直してくれる者、足の傷口に手拭をあててくれる者とあり、とにかく医師に縫ってもらわねぱと自動車にて、病院に担ぎ込まれてしまいました。医師にもひどい怪我だと言われて、二五針縫いその侭自動車にて家に帰りました。すぐ支部のN先生にお願い申し上げ御浄霊をして戴きました。これだけの怪我をしているのにも拘らず、全然痛みもなく、何処を怪我したと思われる様にて二度吃驚です。医師はこれ程の傷でしたらどうしても一カ月はたっぷりかかりましょう、と言われましたが、何と一〇日でこれ程の傷が全快しましたのでございます。今までに他工場では巻き込まれて助かった者は、一人もいないとまで言われましたのが、只足の傷一カ所で、それも無痛であり、短時日にて再び職場に出られたのは類がないと言われました。これも人間の力のみでは死を防止する事は不可能と思われます。偏に明主様の御守護の賜物と只々感謝致します外、何ものもございません。大愛深き明主様有難うございました。厚く厚く御礼申し上げますと共に、地上天国建設に人類救済の御目的に、より以上御協力させて戴きまして御恩報じをさせて頂きます。