御蔭話 東京都M.S. (昭和二七年三月二九日)
私事、昭和二三年七月よりこのお道にお縋り致し、数々の御救いを戴いて居り乍ら、満足な御導きも出来ぬ今日までを、謹んでお詫び申し上げます。
昭和二七年一月二〇日前後かと存じます。夜一〇時少し前外出先より帰宅致しますと、家の前のどぶの所で、自動車がエンコして動かず、運転手さんがしきりにエンジンをフカし乍ら困っておられました。家の前は何しろ道の悪い所故、私もお気の毒になり「どうしましたか」と尋ねますと、「スリップして困りました。一人だし・・・・何か二尺ばかりの板があったら」と申しておられます。その辺は何もありませんから「私の家で探して上げましょう」と申して家に入り、どうやら間に合うらしい板を持っていってあげました。「それで結構です」と安心した様子でしたので、そのまま私は家に入り、火をおこし、夜の食事の仕度に取掛りました。するとまたエンジンの音がブウブウブルブルと盛んになります故、おやおやまだ動かないのか、この寒さ故他に故障が起きたのかしら、起きても運転手さんの事ゆえ、直ぐなおすことでしょうと思い乍ら食事を終え、後片付をし、翌朝のお米もとぎ一日の仕事もすっかり終りました。私の家はガスや水道がないので、火を起したり、井戸水をくむので割かた時間がかかります。それでもまだブウブウなっております。時刻は一二時五分前でした。一晩中ブウブウ唸っていては、御近所の家でも寝られません。私も寒い故、早く炬燵で温まりやすみたいと思いましたが、この寒いのに運転手さんが気の毒と思い、そうだ、大光明如来様にお願い申し上げて、お救い頂こうと思い、御奉斎室に入り明主様、大光明如来様にお願い申し上げておもてへ出れば、身を切られる様な北風、運転手さんはと見れば姿が見えず、さてはこの寒さに疲れて、車をおいて帰ったのかと思いましたが、よもやと思い電気のついていないクッションの方を見れば、真暗で何も見えません。でも声をかけてみようと「運転手さん、まだ動かないのですか、どうしました」と申しますと、ようよう窓を開けて「スリップしてどうしても駄目だから、今駐在所の巡査に頼んで、向いの電話をようようかけて、言伝を頼んだのですが、巣鴨だから、来ればもうとうに来るはずだが・・・・」とこぼしておられました。「それでは来ればよいが、来なければ明日の朝までこの車の中で震えながら寝るのですか。この寒いのに幾らお若い方でも堪りませんね。今神様にお願いしてあげますからそのままで少しお待ち下さい」と申して、直ぐスリップしている所を御浄霊させて頂き天津祝詞をお唱えして、お願いして居りました。確か一五分も経ちましたか、運転手さんに「動かして御覧なさい」といいました。運転手さんはエンジンをかけました。二時間以上も経っていました車体は凍りついた様でした。御浄霊の手は休まずつづけておりました。その時です、大神様は私の霊感に「逆行せよ」と妙智をお与え下さいました。すぐ運転手さんに「逆行」といいますと、運転手さんは「後へですか」と聞きました。「そうです」と私はいいつつ御浄霊し乍ら、大神様にお願い申し上げているうちに、エンジンの音と共に大きく車体が動き始め、少しずつ逆行し始めたではありませんか。その時の私の嬉しさ有難さは、この筆には到底現わせませんでした。口で「オーライオーライ」と言いながら、御浄霊の手は続けて居りました。段々と逆行する車は泥だらけでした。私は車について、そばのどぶへ落ちるのも忘れました。運転手さんに「もう大丈夫ですよ」と申しましたら「まだどうだかな」などと言っておりました。「こんなに動いたではありませんか。では前進してごらんなさい」といいました。運転手さんは不思議と思われたのでしょう。それより十四、五米前進し楽々走り出しました。車を止めた運転手さんは、私の側へ来て「助けて頂いたのでどうしたら宜しいですか」といいました。私は「どうもせずと宜しいですょ、大神様にお願してお救いして頂いたのですから、若し感謝のお気持がおありでしたら、熱海の世界救世教の大神様へ御礼のお心特をお向け下さい。そうしてこのお救いは自動車ばかりでなく、病貧争、心の悩みもすべて何でもお救いして下さいますから、もし知人に御病人でもおありでしたら知らせてお上げ下さい。それでも貴方のお心特が、大神様に通りますからね。さあ、よかったですね、寒かったでしょう。早くお帰り下さい」と申しましたが、暫く立ちすくんで居られました。何か心に感じた事がおありのようでした。「では、何時かお尋ねする事があるかも知れませんから、今夜はこれでお別れ致します。有難うございました」と申されて勢いよく帰られました。私は早速家へ入り、明主様、大神様へ御礼を申し上げ、曇多き私にも、お救いの御力を賜わる有難さをしみじみと感じ、涙と共に御礼を申し上げました。何時かその運転手きんも、世の悩める人々にお知らせ下さる時もある事を楽しく存じ居ります。明主様、誠に有難うございます。謹んで御礼申し上げます。