「イセエビ漁に御守護」

御蔭話 長崎県N.J. (昭和二七年六月一日)

入信以来数限りなく御守護いただき感謝の日々を送らせて戴いている者でございます。善言讃詞の中に「漁豊に天ケ下生とし生ける億兆の歓ぎ賑はふ声々は・・・・」ありますが、その海の幸を一身に戴いた御利益の一端を報告させて戴きます。私はエビ網を持っていますので毎年操業致しておりますが、このエビ網にも漁獲の時期がありまして、長崎県では毎年五月一日以後七月三一日までを「イセエビ」の産卵期として一切漁獲が禁止されております。

私の村にも同業者が数名ありまして時期中は全く競争でございます。今年も早い連中は三月頃から早速漁を始めましたが、いつまでも寒さが続いたせいで、あまりかんばしい成績もあがらずにいたようです。私は人手が足らぬのと、準備その他の事で操業が一カ月以上も後れ、操業期間もあと二週間しかないという頃からやっと始める事が出来たような始末でした。従って僅かの期間に、早くから始めている連中の漁獲高に追いつこうと思い一生懸命大光明如来様にお願いいたしまして操業をはじめました。夕方漁場に行って網を投じ、翌朝早く引上げて「エビ」をとる仕組でございます。果して毎朝の漁獲高は御神助により他の舟よりも必ず遥かに多いのでした。

先日、A先生がお見えになり、「明日は支部の大黒様の御祭を行います」と申しますので翌日お参りして漁獲した「エビ」を御供えさせていただき、残り僅かな期間をうんと御守護戴き、御用できますよう御願い申し上げました。ところが果然、御利益たるやすばらしいものを戴きまして感謝感激の極みでございます。これから当時の実状を報告いたします。それは二週間足らずの期間も明日で終ろうという四月二九日のことでございました。

漁獲いたしました「エビ」は船で長崎か佐世保の市場に積み出すわけで、期間が四月一杯ということなので五月一日までは市場で取扱ってくれることになっております。したがって期間一杯、二九日の晩まで操業出来るのですが、天候の関係では早目に切り上げて積み出さないと、若しも時化でもあると船が出せず取扱い期日に後れ、もはや市場で取扱ってくれぬことになりますので、大抵他の連中は二八日限りで切上げて、二九日の朝「エビ」を船に積み込んで長崎方面へ運びます。この時は私達もどうしようかと思案しましたが、なに期日一杯操業しても必ず御守護戴けるに違いないと思い切って期間一杯まで操業することに致しました。ところが二八日の朝方から南風が強くなり、だんだん度を増しますのでこのまま時化られたら大変なことになるがと多少心配しておりますと、嬉しや翌二九日の朝方に至り風はぴたり凪ぎ、唯うねりのみ残っているのでございました。通常「エビ」は凪の時よりうねりのある時の方が沢山とれるものなのでございます。これをもって御神助と言わず何と申したらよろしゅうございましょう。夕方を待ちかね私たちは勇躍漁場へとこぎ出したのでございます。他船は一日早く切上げて居ます故、船は私たち只一隻、一人舞台の漁場で次から次への網を投ずる快感――。筆にも言葉にも尽くせるものではありません。私たちは、「明日は大漁だぞ」とはずむ心で語り合い乍ら港へ帰ったのでございました。さて、翌朝明けるを待ちかねて漁場に向い網を引上げて見ますと、驚く勿れ、予想にたがわず見事な「エビ」が網にかかって揚がること揚がること――。全くあきれる程の大収獲に、思わず「明主様有難うございます・・・・」と心に御礼申し上げたのでした。

これこそ私たちに与えて下さった神様のお恵でなくて何でしょう。今更の如く神恩の広大無辺に驚くと同時に、感謝感激の念を新にしたことでございます。この日の漁獲高は何とこれまでの一日分の五倍以上、想像もつかなかった漁獲でございました。あとでこの事実を知った他の連中がくやしがるまいことか。それもあながち無理ではありません。私達と同様に期日まで操業していたらやはり神助の一端にあずかり得たものを信仰なきものあわれなる哉、わずか一日の違いでこんなになるうとは夢にだに考えられなかった事でありましょう。

お 蔭で僅か二週間足らずの操業でしたが早くから操業していた連中に勝るとも劣らぬ漁獲高をあげさせて戴きました。これも偏に大光明如来様、明主様の御守護の賜物と深く深く感謝致します。明主様、誠に有難うございました。