「世界救世教奇蹟集」昭和28(1953)年9月10日発行
毎年発疹チフスによる当局の予防施設や、国民の不安は砂なからぬものがあるのは、衆知の事実である。ところが幸いにも、左記の体験による報告があったので載せる事にした。これによると、本数浄霊による治癒率は、医療と比較にならぬ程の素晴しい成績であると共に、注射が反って病気を悪化させる事実は、大いに注目すべき要があろう。本年も旧臘からの状況によると、相当流行の兆しが見えるというのであるから、大いに注意すべしというよりも、この記事を参考にされん事を忠告するのである。
御蔭話 静岡県S.T.(昭和二六年一月一日)
私は九年程前教修を受け、爾来幾多の奇蹟的な御守護の許に数々の人助けをさせて戴いている者であります。
今回は在満当時、終戦後体験致しました発疹チフスに就き世界救世教奇蹟集まして御報告させて戴きます。
終戦直後昭和二〇年暮頃より満州には満人も驚く程の悪性発疹チフスが蔓延し、私の居りました奉天市は時恰も北滴地区より避難して来た数万にのぼる日本人の為、市内は混乱して居る際とて、その恐怖は大変なものでした。瞬く間に数千名が発病し、学校等を応急隔離病院として数百名の医者、軍医等が凡ゆる方法を施しましたが殆んど効果なく、毎日数十名(或はそれ以上)が無断な狂死をして行きました。私共の社宅は二五家族ばかりおりまして、一同胸々として居りましたが、遂に二十七、八歳位の某氏が発病しました。病院は無論一杯でしたので、毎日医者、軍医が来て注射や氷冷を行いましたが一向効果なく一週間位で狂ったまま死んでゆきました。私も一度見舞に行き、御浄霊をと思いましたが、何せ医者看護婦がつききって居り、全然手出しが出来ませんでした。
それから数日後、今度はNと言う若夫婦が殆んど同時に罹病致しました。三、四日前の某氏の無断な死を見た社宅の人々は、私とG君一(年ばかり前に肺病にて喀血しましたが数回の御浄霊にて治り、結婚の為内地に帰った時数修を受けて来た)以外は見舞にすら行きませんでした。
私は最初発疹チフス何物ぞ、たかが高熱が一寸続き発疹する浄化ではないか、今までの体験より考え、如何なる高熱でも三日もすれば必ず治る自信をもって始めました。ところが三日過ぎましても依然として熱は下らず、一日三、四回宛御浄霊致しましたが、浄霊直後は一応熱が下りますが、三〇分もすると益々高熱が出て来て、五日目には遂に脳障害を起し、完全に頭が狂って仕舞いました。五日間全然食事は摂らず、僅かに水を飲むのみにて、夫婦枕を並べて共に狂い、奥様は子供の頃の歌を唄い、主人は訳の分らぬ事を喋り、目は全然見えぬらしく、空な目付で天井をみつめているのみでした。床の中には虱が大分見える様になって来ました。虱のわいた床の上に何回となく坐りますので、或は自分も誘発するのではないかと思いましたが、その時は教修受けているG氏が居るからと安心して続けて居りました処、そのG氏夫婦が又々共に発病してしまいました。残るは私と妻のみ「若し自分が発病して狂っても決して医者に見せるな、誰が何と言っても御浄霊さえして呉れればよい」と妻に話して悲壮な決心を致しました。
この頃になって世間の非難はいよいよたかまり、中には親切に「どうせ駄目だろうが、一度医者に見せておいた方が貴男が内地へ帰って親兄弟に遭った時言い訳も立つから」と言って呉れる人もありましたが、「何大丈夫だ」と皆断って居りました。看護疲れのした身体で同時に四名の発疹チフス患者を抱え、それが最初の予期に反し、日々症状は悪化し、人の寝静まった深夜、気が狂った病人を眺めながら「自分の御浄霊は効かなくなったのではないか知ら、或は発疹チフスには効果がないのかしら、若しそうだとすれば、友人四人までもこんな事にしたのは自分の責任だ、狂ったまま四人共死んでゆくのではないか」等と様々な恐怖に襲われた事もありましたが、すぐその後より、そんな馬鹿な事があるものか、誠心誠意御浄霊して居れば、その内に必ず目の前の私が判って「Sさんですね」と言ってくれる時が来るに違いない、ここで挫けたのでは明王様に申訳ないと遇か東の方を念じつつ御浄霊を続けました。時々病人の前に私の顔を突き出してみますが一向反応がありませんでした。
忘れもしません、発病後八日目、朝食をすませて枕許に坐622世界救世教奇蹟集りました。すると力のない目付ですが、私の顔をみつめて「Sさんですね、何だか頭が変だが、家内は何処へ行きましたか。ライスカレーと水を下さい」と言うではありませんか、私の予期していた言葉そのままが病人の口から出たのでした。私のこの時の喜び、幾度かの奇蹟の中でもこの喜びに優るものはなかったと思われます。熱いものがこみ上げて思わず遥かな祖国に向って明王様に手を合わせたのでした。
「もう絶対大丈夫だ」と益々力が湧き一心に御浄霊致しますと面白い様に濃い鼻汁が出て頭は一時間一時間はっきりして参りました。奥様も前後して大体同様の経過を辿り、発病後は体は衰弱して居りましたが、誰の目にも治ったと分る様になりました。最早絶対の自信を持つ事が出来ました。その時は未だG氏夫婦は盛んに頭が狂って居りましたが、もう恐怖感はありません。狂人を相手に戯言を言いつつ笑って御浄霊を致し、同じ経過にて完全に治させて頂きました。 G氏の奥様はその時妊娠八カ月の身でありましたがその後大きな男児を生み、母子共壮健でした。この間私の社宅内にて他に六名発病致し、五名医者にかけ四名死亡、一名は注射をするとどうも死亡率が高いと一般にわかって来ていました後期でしたので、何もせず寝かして置いた様でしたがこの人は助かりました。併し体力が快復するまで二カ月もかかりました。これに引替え御浄霊で治った人達は二〇日間で全治致して居ります。神力の偉大さにただただ驚嘆する外ありませんでした。
注射氷冷を行った患者は結果が悪く、むしろ注射を余り行わない方が遇かに成績がよい事が何千人かの犠牲者を出して、初めて一般も分り、追々注射を減じた為か、医療による死亡率も減じ、最初七〇%以上の死亡率が、末期には三〇%になった様でした。私は発疹チフスの患者を一〇名ばかり御浄霊致しましたが、全部全快一〇〇%の治癒率で、然も病後の体力の快復は医療に比し格段の相違がありました。
当時の発疹チフスの症状は四〇度以上の熱が続き、頭部が割れる様に痛み、二日位後に全身に軽い発疹があり、これが二日位にて消えてなくなり、五日目頃より脳障害を起し、例外なく発狂してしまいました。一心に御浄霊を続けて居りますのに段々悪化して狂ってゆくのを見ている事は実際恐ろしいもので、逃げ出したくもなりましたが、一度体験して脳障害は別に心配する症状ではなく、前頭部の御浄霊により、鼻汁が出て簡単に治る事を事実に於て知らせて頂きました。
御浄霊の奇蹟的な効果が漸く一般に認められる様になった頃、さしもの悪病も終焉しましたが、それからは多くの人々の依頼を受け引揚げるまで種々の病人を御浄霊させて戴き、貴重な体験と顕著な効果をあげさせて戴きました。
以上が発疹チフスに対する私の体験であります。私の如き者にこの絶対の御力を下された明主様に御礼申し上げ、又多少にても皆様方の御参考になれば幸いと考え御報告させていただきました。