自観叢書第4篇、昭和24(1949)年10月5日発行

私が常に言う事は、宗教の真髄は奇蹟に在る。宗教即奇蹟といってもいいとする。何となればいか程深淵な理論を並べても、病気一つ治し得ないではなんらの価値がないからである。よく現当利益を非難する人があるが、これは大いに間違っている。はなはだ失礼だが、これは現当利益のない宗教が、その宗教を価値づ けるために作った説としか思われない。

本教に入信するもののほとんどといいたい程動機は現当利益からである。従って本教の唱える宗教理論の方は、入信してから初めて知るくらいである。とすればなぜ本教には奇蹟が多いかで、この事は皆知りたがっているところであるから、ここで簡単にかいてみよう。

本教の出生は日いまだ浅いが、実は私が企画したものでは全然ない。全く観世音菩薩が時期到来によって、因縁ある私の肉体を行使され始めたのであるから、 実は菩薩御自身が開教されたものである。従って菩薩は、観音力を私を通じて、自由無碍に発揮させ給い、救世の大業をなされつつあるので、奇蹟の顕われるのは当然である。故に以上の意味さえ信じられるとしたら、何の疑いもなくすべては首肯（しゅこう）され得る筈である。

この著の初めの方には、私が遭遇した奇蹟の体験談数種を掲載したが、私自身が確固たる信念を得たのも、これらの奇蹟が与（あずか）って力あったのはもちろんである。右に続いて信者からの報告の無数にある中からその一部を集録したものである。