「観音心と盗心」

大分県佐伯郡Y.S

教団になったと言うお話を聴いて余り間のない頃ですから二十二年の九月頃の事と思います。

朝起きて見ますと火鉢のそばにある座布団の上に二百二、三十円位のお札がばらまかれてあるのです。おかしな事があるものだと思い、もしかすると主人が使った残金を忘れたのだろうと思い気にもとめずにしまいました。

それから暫くして主人が煙草を買うから金をくれと申しますのでタンスの抽出しをあけましたが、確かにしまってあるはずの金が二千九百円程ありません。主 人に尋ねても一向知らぬと言いますし、では座布団の上に今朝二百二、三十円の金がおいてありましたが、あれはあなたのですかと訊きますと知らぬとの事です から、もしかすると盗難に罹ったのかと思い、その時はまだ御書体をお祭りしてありませんでしたので、教導所のお観音様に一生懸命お願い致しました。それか ら自分の不注意をお詫び致しまして余り気にもとめずにいました。

すると三日後に階段にハダシの足跡がついているのです。おかしいねえ一体どうしたのだろう又盗難かな、としらべてみると机の上の本箱の上に千五百円の金 が置いてあるのです。良心にとがめてもっていられなくなってきっと返しに来たものだと思います。その時程観音様の御利益を感じさせられた事はありません。 余りの不思議さに主人も驚き、早速会員にならしていただくのだと御守様をおかけし、それからは特に協力して下さるようになりました。それから二カ月程経っ た二月頃だったと思います。霊気を入れると魚がよくつれると言う御話しを先生から御伺いしましたので、その頃は主人がイサリが好きで毎夜一貫目位いなお魚 をとって来ます。

その話を主人にしましたところいくら有難くても霊気を入れて魚がとれるなんてそんな事はないだろうと申すものですから、でも先生が仰言ったのですから間 違いはないでしょうとにかくやってみましようと、イサリ漁の御供をさしていただきまして舟を浄め、海に向って一生懸命に霊気を入れてゆく中に一貫三百匁も ある大きなヒラメをとるやら、チヌを二貫目ウナギやら色々な御魚をその晩に限って五貫目も漁がありました。有難いやら勿体ないやらで翌日魚を持って教導所 に早速御礼参りをさしていただきました。