『癲癇』

自観叢書第9篇、昭和24(1949)年12月30日発行

癲癇の例として十数年前私の家に使用している下婢の事を記いてみよう。これはよほどおもしろい例で、最初の頃は発作するや意識を失い所構わず倒れるが、その際の面貌は物凄い程で、顔面蒼白、唇は紫色になり、舌を噛み口唇から血液が流出している。その状あたかも殺害された死人と少しも異ならないのである。それが治療によって漸次快方に趣き、発作は極軽微となり、意識を失う事はなく、多少の不快を伴うくらいにまでなった。その際前額部深部を霊射するや、憑霊は悲鳴を挙げ、「助けてくれー」と繰返す。私は、「助けてやるから、この肉体から出よ」と言うと、「行く所がない」という。憑霊が行く所というのは人間の体である。この場合、全然他人の体へは憑る事が出来ないから始末が悪い。そうして右の下婢を施術するや、前額部へ霊射二、三分にして肩、腕、腹部等へ次々と移動する。おもしろい事にはその局部を圧査すると必ず毒結がある。そうして憑霊の逃げ廻るのを追かけるように一々霊射する結果、霊は極度に萎縮し、苦痛は一時解消するのである。

この下婢の霊は、祖母にあたる者が不義の子を宿し、出産するや圧死させた。その嬰児の霊である。その嬰児の霊へ、祖母に関係ある狐霊が憑依し、同化霊となって活動したのである。