『序論』

「アメリカを救う」昭和28(1953)年1月1日発行

今回本教信者立松文二君が、米国ノートルディム大学(カソリック系)に留学、一カ年を経た最近ひとまず帰朝したので、かねて依頼してあった現在米国における主なる病気の統計を精査記録したものを持って来たので、私は一見するや愕然としたのである。それは同国における驚くべき病者の氾濫であって、全く私の説を立証して余りあるからである。そうして今日日本人の誰もが思っている事は、つい最近まで世界医学の覇権を握っていた彼(か)の独逸(ドイツ)を凌駕して、隆々たる今日の米国医学の事であるから、定めし素晴しい成果を挙げているに相違あるまいと共に、私もそう思っていたところ、事実は余りに裏切られており、その悲惨なる現状には、到底見るに忍びないものがある。従って今後もこの趨勢が続くとしたら、この恐るべき状態は益々深刻の度を加え、いずれは国を挙げての一大危機に直面する日の来ないと誰か言い得るであろう。

しかも米国が現在国を挙げてその対策に腐心し努力しつつある彼のソ連の軍備と、共産主義の脅威であるが、これも重大には違いないが、それとは別な意味でのこの健康問題に至っては、むしろそれ以上の重大性があろう。何となれば共産主義がいかに侵略の爪を伸ばすといえども、自由主義国家群の連合によって、軍備を充実すれば防止出来ない事はないが、この方はそうはゆかない。なぜなれば現代医学の余りにも無力であるからで、まだその原因すら分っていないばかりか、たとえ分っても解決の手段は絶対あり得ないからである。としたら前途は全く暗黒の一語に尽きるであろう。これを吾々からみれば現代医学そのものに、恐るべき一大欠陥が伏在している事である。にもかかわらず全然それに気が付かず、むしろ反対な方向に進んでいるのである。それは左記の統計〔略〕を見れば分る通り、年を経る毎に加速度的に、あらゆる病気が殖えつつある現状で、もしもこのままとしたら、向後(こうご)一世紀を出でずして今日の強大な米国といえども、急速度に衰退の止むなきに至るのは断言出来るのである。その例として現在ヨーロッパにおける高度の文明国家としての彼の英仏である。両国近来の衰え振りはどうであろうか。彼のトラファルガー戦争時代の英国といい、ナポレオン戦争時代の仏国といい、その国民の元気を今日と較べたら、余りの異(ちが)いさに驚かざるを得ないのである。この原因こそ全く誤れる医学の結果に外ならない事は、以下の解説によって判るはずである。

そうして今私は世界の文明各国を見渡したところ、ともかくキリスト教をもって立国の方針となし、一般国民は神を信じ、正義の行われている国としては、まず米国をもって第一とせねばなるまい。それが米国繁栄の基礎でもあり、今日のごとき偉大なる国家となった原動力でもあろう。という意味において今日世界の平和を維持出来る力をもつ国としたら、同国を措(お)いて他にない事は言うまでもない。この意味において何よりもまずこの国の国民の健康をよりよくする事こそ焦眉(しょうび)の急であり、世界の平和と人類の幸福に対する最大条件であろう。従って私は一日も速かに同国における病気蔓延の趨勢を食止めると共に、なお進んで病なき米国たらしめるべく、まずこの著によって自覚を促さんとするのである。そこで私は統計の順に一々の病気について、その原因と治す手段と、予防方法と、治病実績とを詳しくかいて英文に訳し、大統領始め各方面の識者、医事関係者等に頒布(はんぷ)するのである。

ところで日本人についても言いたい事は、米国医学が如上(じょじょう)のごとき真相であるにかかわらず、今日最も進歩せる医学と誤信し、これを採入れようとしているのであるから、実に恐るべき迷妄である。これも全く唯物科学心酔の結果、米国医学の外形的進歩に眩惑されたからであろうが、これを考えれば日本も米国と同様まことに危いかなである。ゆえに日本の当事者もこの著を読んで、速かに目醒められん事を望むのである。最後に一言したい事は、医学が進歩する程病人が増えるという厳たる事実は、現在米国が遺憾なく全世界に示している事である。


『アメリカを救う』は、英文でもご覧いただけます。
Johrei Saves America

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