2.痛苦

痛苦即ち痛みなるものは如何なる訳であるかというに、前にも述べた如く浄化作用の発熱によって凝結毒素が溶解され、液体となった毒素が、何れかに出口を求めて、その方向に進まんとするその運動が、筋肉の神経を刺戟する。――それが普通の痛みの原因である。

以上のような痛みの症状は、盲腸炎、急性腹膜炎、急性腎臓炎、頭痛、歯痛、中耳炎、リヨウマチス、各種神経痛等、実に多種多様である。又、骨膜炎と名付けられている骨に関する痛みの原因は、骨膜に凝結した毒素が浄化によって溶解し、それが移動する場合、骨膜から筋肉へ進み刺戟するのである。

又、骨膜の裏面にある毒結が、浄化溶解して表面へ進出せんとして、骨そのものに極微な穿孔をする。その竇(あな)の数は毒素の量によって多少があるのである。勿論、その数の多いほど激痛である。肋骨カリエス、中耳炎、歯痛等其他骨髄炎といわれるものはそれである。此無数の穿孔ある場合、医家は骨が腐るというのであるが、それは誤りである。何となれば、毒素が溶解除去された後は、旧通り完全になるからである。

次に、特殊の痛み、例えば、手指の瘭疽(ひょうそ)、足指と其付近に於ける脱疽の痛み、痔瘻(ろう)等の痛みは勿論、浄化作用による毒結の排泄であるが、之等は非常に猛毒であるから激痛である。之は第一浄化を侯(ま)たずに、第一、第二、両浄化作用が同時に起るのであるから、浄化力旺盛な青年期に多いのである。之等の病気に対して、医家は漸次隣接部に移行腐敗するというが、之も全然誤謬である。私の多数の経験によれば、或程度毒素が集溜すれば、それ以上増大する事は決してないのである。そうして、充分集溜腫脹(しゅちょう)して自然穿孔され、 そこから膿汁毒血が排泄されて完全に治癒するのである。然し乍ら、その症状は一見腐敗する如く見ゆるので、医学に於ては、腐敗すると誤ったのであろうが、その為に切開手術を行い、一種の不具者たらしむるのである。繰返していうが、私の永年の経験によって、脱疽と瘭疽は、腐敗はしない事をここに改めて断言しておくのである。

次に胃痙攣の痛みは別であって、之は、胃病の部で説いてあるから、此所では略しておく。其他、火傷や負傷等もあるが、之は病気ではないから、時日の経過によって、必ず自然に治癒するものである。もし痛みが永続するか、治療しない場合は、その原因は消毒薬等の為であるから、薬剤を廃して、患部を清水に洗うだけで自然治癒するのである。

右の如く、病気による痛苦には多種多様あるのであるが、その原因の殆んどが薬毒の為である。薬毒の種類によって、痛みや症状が異うのである。

そうして私の経験によれば、漢方薬は広範囲である事と鈍痛が特色であり、洋薬は多く鋭痛で、稲妻型、針刺型、錐揉(きりもみ)型等が多く、又局部的であるのが、特異性とでもいうべきである。

特に、注射の薬毒は激痛の原因となることが往々あるのである。

次に、薬毒以外尿毒の痛みもあるが、之は多く軽痛である。又、然毒は殆んど痛みがないので、医学は先天性徴毒と思い誤ったのであろう。