5.下痢

下痢は最も多い症状であるが、先ず急性と慢性とに区別される。急性は、飲食物による中毒即ち「食あたり」が多いのである。世間よく、寝冷によって起るというが、之は殆んど誤りで、冷によって下痢をするという事は極稀である。食あたりの下痢の際、薬剤等によって止めるか又は反対にヒマシ油等によって排泄を促進させようとするが、之は不可であって、自然に排泄させる方が成績は良いのである。

次に、急性下痢症に、食あたり以外に、俄然として起る頗る猛烈な下痢がある。これは一日十回以上、甚だしきは数十回に及ぶものさえあり、罕(まれ)には度数をかぞえられぬ程で患者が意識出来ない程、水便を漏すものさえある。そうして血液が混入して腐肉が下るかと想われるような下痢もあるが、之等は悉く膿や毒血の凝結したものが、猛烈な浄化作用によって排泄されるので、決して肉や臓器の一片だも排泄せられるのではないのである。斯ういう猛烈な下痢は、老人には殆んどなく青少年に限るといってもいいのであるから、旺盛なる浄化作用である事は明かである。故に、放置しておけば必ず治癒するのである。然るに之等猛烈な下痢の場合、医家も患者も非常に恐怖し、停止せしめようとする。然るに停止療法を行えば悪化するのが当然であって、其為、死を招く惧れさえあるから注意すべきである。

次に、慢性下痢があり、それが数ヶ月乃至数ヶ年に及ぶものさえある。医家は多くは、結核性となし、怖れて停止療法を行うが、之も非常な誤りで、事実は、腹膜に溜結せる膿が、緩慢な浄化作用によって僅かずつ溶解され、下痢となって排泄せられるのである。此膿は、腎臓萎縮による尿毒が、常に腹膜へ集溜するのであるから、腎臓を健全にしなくては、完全に治癒され得ないのは勿論である。然し乍ら、非常に長年月放置しておけば、腎臓萎縮が自然に治癒されるので、腹膜も治癒され下痢も無くなるのである。