『調和の理論』

「栄光」176号、昭和27(1952)年10月1日発行

昔からよく調和という事を言われるが、これを単に聞くだけではいい意味にとれ、道理のように思われるが、実はこれを丸呑みに出来ない点がある。というのはなるほど全然間違ってはいないが、この考え方は浅いのである。そこでこれを深く掘下げてみるとこういう事になる。そもそもこの大宇宙の一切はことごとく調和していて、寸毫(すんごう)も不調和はないのである。従って人間の眼に不調和に見えるのは表面だけの事である。何となれば不調和とは人間が作ったものであって、その原因は反自然の結果である。すなわち大自然からいえば、反自然によって不調和が出来るのが真の調和であり、これが厳正公平な真理である。この意味において人間が天地の律法にしたがいさえすれば万事調和がとれ順調に進むのである。

右のごとく不調和を作るから不調和が生まれ、調和を作るから調和が生まれるのが自然の大調和であるとしたら、人間はこれを深く知る事で、これによって幸福者となるのである。何よりの証拠は今は不調和であっても時が経てば調和となったり、調和だと安心していても、いつの間にか破れて不調和になる事がよくあるのも、世の中の真相である以上、よくよく味わうべきである。換言すれば不調和とは小乗的見方であり、調和とは大乗的見方であると心得べきである。